データセンター向け冷却装置部品の製作:高発熱時代を支える精密加工技術と品質基準
生成AIの台頭やDXの加速により、データセンター(DC)のサーバーラックはかつてない高集積化・高発熱化が進んでいます。これに伴い、冷却システムの安定稼働はDC運営における最重要課題の一つとなりました。24時間365日の連続運転が前提となるDC向け冷却装置部品には、一般的な産業機器とは比較にならないほど厳しい品質基準と、特殊な製作技術が求められます。
本コラムでは、DC向け冷却装置部品の製作をご検討中の設計者様や購買担当者様に向けて、求められる要件や主要部品の製作ポイント、信頼できるパートナー選定の視点を解説します。
データセンター向け冷却部品に求められる「3つの製作要件」
DCの過酷な環境下で部品が機能し続けるためには、設計段階から以下の要素を考慮した製作体制が不可欠です。
1. 絶対的な信頼性と耐久性(ゼロ・ダウンタイムへの挑戦)
DCの停止は莫大な経済的損失と社会的影響を及ぼします。そのため、冷却部品には「故障しないこと」が何よりも優先されます。
- 長期耐久性: ポンプのインペラや軸受、ファンのケーシングなどは、長期間の連続運転による疲労破壊や摩耗に耐えうる材料選定と加工精度が必要です。
- リーク(漏れ)ゼロの保証: 特に液冷システムにおいて、冷媒の漏れはサーバー機器の故障に直結します。溶接、ろう付け、機械的接合部における厳格な気密性試験(ヘリウムリークテストなど)が必須となります 。
2. 高密度熱源に対応する精密微細加工
CPUやGPUからの熱を効率的に移動させるため、熱交換部品には極めて高い熱伝達性能が求められます。
- マイクロチャネル加工: 液冷コールドプレートの内部には、流路となる幅数十〜数百μmの微細な溝(マイクロチャネル)が形成されます。この加工精度が熱抵抗値に直結するため、高精度なマシニングセンタやエッチング技術が必要とされます。
- 接合技術: 微細流路を封止するためのカバープレートとの接合には、母材と同等の強度と熱伝導性を確保できる「拡散接合」や高品位な「ろう付け」技術が用いられます。
3. 特殊素材とクリーンな製造環境
- 高熱伝導・耐食材料: 熱伝導率の高い無酸素銅やタフピッチ銅、耐食性に優れたステンレス鋼(SUS304、SUS316Lなど)、あるいはチタンなどが用途に応じて使い分けられます。難削材の加工ノウハウも重要です 。
- コンタミネーション対策: 加工時に発生する微細なバリや切削油の残留は、冷媒配管を閉塞させたり、腐食の原因となったりします。徹底した洗浄工程と、クリーンルームでの組立作業が求められるケースも増えています。
主要な冷却部品と製作技術のポイント
DC冷却のトレンドである「液冷」を中心に、重要部品の製作例を紹介します。
液冷コールドプレート(水冷ブロック)
プロセッサに直接接触する最重要部品です。熱を奪うための受熱部(銅ベース)と、冷媒の流路構成が性能を左右します。
- 製作のポイント: 銅ブロックからの削り出し、鍛造、あるいはフィン形状のプレス加工など、要求される熱性能とコストに合わせて最適な工法を選択します。前述の拡散接合を用いることで、複雑な3次元流路を持った一体構造部品の製作も可能です。
冷却液配分装置(CDU)向けマニホールド
ラック内で各サーバーへ冷媒を分岐・合流させるための配管集合体です。
- 製作のポイント: 複雑な分岐形状を、溶接継ぎ手を最小限にして製作することで、リークりスクを低減します。パイプの曲げ加工技術や、高精度なTIG溶接、あるいはブロック材からの削り出し一体成形などが用いられます。内面の平滑性も圧力損失低減のために重要です。
特殊熱交換器部品
リアドア冷却装置などに用いられる大型の空冷・水冷コイルです。
- 製作のポイント: 銅管とアルミフィンの密着性を高めるための拡管技術や、フィンの複雑なルーバー形状のプレス加工技術が、熱交換効率を決定づけます。
信頼できる製作パートナーを選ぶ視点
DC向け部品の製作依頼先を選定する際は、単なる加工設備の有無だけでなく、以下の点を確認することが重要です。
- トレーサビリティと品質保証体制: 材料証明書(ミルシート)の提出はもちろん、各製造工程における検査記録が追跡可能であるか。ISO9001などの品質マネジメントシステムに基づいた管理体制があるかを確認します 。
- 設計段階からのVA/VE提案力: 「この形状を少し変更すれば加工時間が短縮でき、コストダウンにつながる」「この材質なら耐食性が向上する」といった、製造現場視点での設計変更提案(VA/VE提案)ができるパートナーは貴重です。
- 試作から量産までの対応力: 開発スピードが速いDC業界では、短納期の試作対応と、その後のスムーズな量産移行体制が求められます。
まとめ
データセンター向け冷却装置部品の製作は、日本の製造業が持つ「精密加工技術」「すり合わせ技術」「徹底した品質管理」が存分に活かされる領域です。高発熱という課題に対し、最適な素材と工法を選定し、ミクロン単位の精度で具現化することが、将来のデータセンターの安定稼働を支えることにつながります。
